ここでは,日本におけるMRIの草創期である1980年と1981年に,NMR討論会で発表された講演要旨集を基に,当時の通商産業省電子技術総合研究所で,亀井裕孟先生が行われたMRIに関するお仕事を,当時の歴史的背景と共に紹介します.

1980年,第19回NMR討論会(1980年9月28日~30日),北海道大学文系講義棟

発表題目:NMRトモグラフィ 亀井裕孟,片山義朗,横山 浩

<歴史的背景>1980年頃は,海外の研究機関(Aberdeen大学やNottingham大学)では,人体の画像が出始めていて,国内メーカーは,小型の装置で画像を出し始めていた.たとえば,1980年5月に,東大物性研と東芝は,蓮根の画像を新聞発表している.このような状況の中で,「人体頭部を対象とした磁石」の開発と高周波系の開発が行われたのがこの研究である.静磁場均一性の確保が難しいテーマであったことが良く分かる.

1ページ目

2ページ目

3ページ目
4ページ目

1981年,第20回NMR討論会(1981年11月9~11日),薬学会館ホール

発表題目:NMRトモグラフィⅡ 人体での試み 亀井裕孟,片山義朗

<歴史的背景>昨年から作成した磁石が完成し,ファントムや人体の撮像が試みられている.東芝で人体の画像が得られたのは1982年5月島津製作所で人体の画像が得られたのが1982年7月であるので,この研究で発表されている画像は,それらよりも1年くらい早い.

1ページ目
2ページ目
3ページ目

その後,人体頭部画像は改良されて,「NMR医学」1巻45ページ(1981)には,以下のような画像が掲載されている(1987年発行の「核磁気共鳴技術」,亀井裕孟,工業調査会より転載).

1987年は発行の「核磁気共鳴技術」3ページより転載.裏面もスキャンされていることに注意.原典は,「NMR医学」1巻45ページ(1981)

文責:巨瀬勝美